自治体の悪いブランドイメージをユニークな手法払拭する取り組みを行ってきた足立区のシティプロモーションの事例について取り上げたいと思います。
東京23区の北東に位置する足立区は、「治安が悪い」というイメージで語られることが多い地域です。このような根強いマイナスイメージを払拭するべく、足立区では区外へ向けたシティプロモーションとして「ワケあり区、足立区。」を展開しています。
2009年の足立区政に関する世論調査で、「足立区に愛着を持っている」と答えた区民は約7割だったのに対し、「足立区に誇りを持っている」と答えた区民はわずか3割でした。そこで、足立区は、千住エリアを中心とした大学誘致や区内7地域の再開発を進め、10年以上の歳月をかけて魅力ある街づくりを目指してきました。また、犯罪を抑止するために「ビューティフル・ウィンドウズ運動」を強化したことで、刑法犯認知件数は、2001年のピーク時から、2020年には約8割減少しました。
2020年度の世論調査では、治安がよいと感じる区民は過去最高の64.5%まで上昇するなど、区内での「治安が悪い」街のイメージは払拭されていきましたが、区外在住者のその割合は7.4%にとどまっていました。区内のあらゆる施策については、一定の成果が出ましたが、区外在住者にはほとんど認知されていなかったのです。このような区民と区外在住者のイメージギャップを解消しようと始めたのが、「ワケあり区、足立区。」でした。
区外在住者から正当な評価を得ることで、区民の自己肯定感をあげて街を誇りに思う気持ちを盛り上げることが、シティプロモーション課の取り組みのねらいでした。特設サイトでは、子育て家族や起業家などに「足立区で子育てするワケ、起業するワケ、活動するワケ」をインタビューした「足立区のワケありな人々」などを掲載しました。
このプロモーションのターゲットは、東京23区や足立区の近隣自治体在住の20代~40代の人。マーケティングチャネルとしては、OOH(北千住駅構内ポスター、鉄道車内広告)やSNS広告をタッチポイントとし、特設サイトに誘導する流れをつくりました。