CMが話題でも売れない理由──“認知率の2つの罠”と、売上につながる本当の認知とは
テレビCMは話題になれば売れる――。
この考えは、今も多くの企業のマーケティング現場で信じられています。
しかし現実には、CMがどれだけ話題になっても売上につながらないケースが少なくありません。
なぜでしょうか? その背景には、認知率に潜む2つの大きな罠があるのです。
「CM認知率=プロダクト購入意向」の誤解
CMが認知され、バズり、広告賞を受賞。
そのような「尖ったクリエイティブ」が話題になっても、商品は必ずしも売れないのが現実です。
その理由はシンプル。
CM認知率はあくまで「CMを見た・覚えている」というだけの指標
商品やサービスの認知(プロダクト認知)とはイコールではない
例えば、特徴的なCMソングや演出が話題になった場合、
「CMは覚えているけど、商品名はわからない」というケースは珍しくありません。
尖ったクリエイティブそのものが認知されただけでは、プロダクト認知や購入意向には結びつきにくいのです。
CM認知率データ取得の落とし穴
さらに厄介なのは、CM認知率のデータそのものが実態以上に高く出る仕組みです。
多くの場合、アンケートでCM認知率を調査する際、
- 質問の前に商品やブランドに関する様々な情報を与えられている
- CM認知度の質問時に、対象CMを2回見せられた後で聞かれる
このような状況下では、回答者はCMを実際以上に見た・知っていると錯覚する可能性が高まります。
事実、マーケットで一度も放映していないCMでさえ、認知率が10%以上出るケースもあるほどです。
つまり、CM認知率は過信できない指標であることを、常に意識しておく必要があります。
売上につながるのは「プロダクト便益認知」である
では、どうすれば売上に結びつく認知が獲得できるのでしょうか?
答えは、商品やサービスそのものの便益(ベネフィット)認知を高めることです。
- トリュフ → 料理に加えることで得られる特別感や非日常体験
- 医療食 → 摂取による健康維持や病気予防
- 代替プロテイン → 環境配慮や新しい食スタイルの提案
このように、顧客が購入する理由=便益を的確に伝え、その認知を高めることが、プロダクト購入意向と売上に最も強く結びつきます。
カテゴリーによって戦略は変えるべき
また、すべての商材がテレビCMによってプロダクト認知を上げれば売れるわけではありません。
- 日用品(シャンプー、ビール、洗剤など):
→ 認知拡大 → 店頭購買 が成立しやすい - 特殊商品(医療食、高級食材、代替プロテインなど):
→ 認知拡大だけでは不十分 → 便益認知+購入経路の確保が必要
このように、カテゴリーや商材特性に合わせた認知設計が不可欠です。
単なる商品名の認知を目指すのではなく、生活者の購買文脈における「意味づけ=便益認知」を深めることが鍵となります。
認知には「意味のある認知」と「意味のない認知」がある
話題性だけのCMでは、売上にはつながらない。
重要なのは、CMを起点にしてプロダクトの便益認知→購入意向→売上という流れを設計することです。
- CM認知率はあくまで到達指標
- プロダクト認知(特に便益認知)が購買行動を生む本当の認知
- 商品カテゴリーにより、最適な認知設計は異なる
“CMがウケた”だけでは売れない。
本当の勝負は、「その先の認知」をどうつくるかで決まるのです。