なぜ、あの人気サロンは破綻したのか?中小企業・新規事業担当者のための“急成長と失速”のリアル分析

かつて脱毛サロン業界で急成長を遂げ、多くの顧客を集めた「銀座カラー」。若い女性を中心にその名は一躍有名となり、最盛期には業界のトップクラスにまで躍り出ました。しかし最終的には経営が悪化し、破産という結末を迎えることになります。
本記事では、銀座カラーのマーケティング戦略に焦点を当て、成功の要因とその後の失速、破綻に至るまでの経緯を解説します。急成長を支えた戦略と、その裏にあったリスクの両面から学びを得ることで、中小企業や新規事業に関わる方々にとってのヒントを提供します。
銀座カラー、破産までの道のり
「銀座カラー」を運営していたエム・シーネットワークスジャパンは、1993年に銀座に1店舗の脱毛サロンとしてスタート。2010年代に入ってから急成長を遂げ、テレビCMに有名タレントを起用し、「通い放題プラン」などを武器に若年層女性を中心に支持を集めました。その後、渋谷・横浜など主要都市に次々と新店舗を展開。ピーク時には全国約50店舗、会員数は80万人を超え、2020年には売上高が125億円を突破。10年で6倍以上の成長を達成し、業界の大手へと成長しました。
成長から失速、そして破産へ
ところが、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大が急ブレーキをかけます。来店者の激減により、2021年度の売上は100億円に縮小、11億円の赤字を計上。その後も医療脱毛の価格競争が激化し、2023年度には売上が45億円まで減少、営業赤字15億円、最終赤字23億円を記録。債務超過は65億円に膨らみました。事業譲渡を試みるも、買い手は見つからず、資金は枯渇。最終的に、2023年12月、破産申請に踏み切りました。
破綻の本質的な要因:前受金への依存
同社は銀行からの借入が少なく、2022年時点で借入金はゼロ。しかしその裏で、事業を支えていたのは「前受金」でした。これは顧客が契約時に支払った施術料金のことを指します。
なんと負債総額91億円のうち、70億円以上(全体の約77%)が前受金という構造。顧客数が増えている間は成立していたビジネスモデルも、コロナ禍で新規獲得が止まり、既存顧客の来店も減ったことで資金繰りが悪化。いわば「新規顧客による自転車操業」の構造が、逆回転した瞬間に破綻へと傾いたのです。
中小企業・新規事業担当者への示唆
銀座カラーの事例から学べる教訓は以下の通りです:
- 成長のスピードに資金繰りとサービス体制が追いついていたか?
- 収益モデルが「前受金」に過度に依存していなかったか?
- 急拡大フェーズにおいて、外部環境変化に対するリスク対策を講じていたか?
魅力的なマーケティング施策や成長戦略の裏側に、どんな構造的なリスクが潜んでいるのか。中小企業経営者や新規事業担当者にとって、他人事ではないテーマと言えるでしょう。