中小企業が生き残る鍵は「たった1人の顧客」にある──N1分析で売上突破

顧客起点マーケティングとは何か?

「顧客起点マーケティング」とは、一人の顧客を深く理解することで、商品・サービスの新たな可能性を見出す手法です。単なるアンケートでは見えてこない、「購入の決め手」や「態度変容のきっかけ」を探ることが、その核心にあります。


「1人」の声にこそ、事業の未来が宿る

「N1分析」は、1対1の深いインタビューによって、ある一人の顧客がなぜその商品に惹かれたのかを丁寧に掘り下げていく方法です。

  • 1人の“強い実感”を起点に
  • 同じニーズを持つ潜在顧客を見つけ
  • 商品の切り口や打ち手を形にする

このプロセスによって、顧客の「心が動く瞬間」が明らかになります。


価値は「企業が与えるもの」ではなく、「顧客が見いだすもの」

企業ができるのは、あくまで「提案」だけ。その提案が顧客の心に届いたとき、はじめて「価値」として認識されます。

  • 便益(=嬉しい)だけでなく、
  • 独自性(=ここにしかない)を兼ね備えた提案が重要です。

セグメントの理解が、N1分析を支える

顧客といっても、全員が同じではありません。有効な施策に結びつけるためには、顧客全体を正しく分類する必要があります。

5segs(ファイブセグズ)

5segsとは、顧客をロイヤル、一般、離反、認知未購入、未認知の5つのセグメントに分類するマーケティング手法のことです。

出所:M-Force

9segs(ナインセグズ)

9segsは、5segsの「未認知顧客」より上位のセグメントを、「次回も自社ブランドを購買する意向があるか」の有無で2分割(積極/消極)することで、より細かく顧客を分類します。

出所:M-Force

この分類を行ったうえで、それぞれの層に対してN1分析を重ね、打ち手を設計します。


事例:ロート製薬「肌ラボ」のブレイクスルー

1000円台の保湿化粧水「肌ラボ」は、当初伸び悩んでいました。しかし、1人の顧客が「手が頬にくっつくほどベタベタする」と評価し、「これが保湿の証拠」と話した声が大きな転機に。

この一言をもとに、商品の価値を「もちもち肌に変わる化粧水」と再定義。それを基にした訴求展開によって、売上は10倍に跳ね上がり、海外展開にも成功しました。


小さな「共感の核」を探す営み

  • 小さくても、深く響く「共感の核」があれば
  • その体験を求める他の顧客にもリーチできる

それを見つけ出す手法こそ、N1分析です。そして、それを支える土台が、適切な顧客分類によるセグメンテーションなのです。


まとめ:マーケティングは“価値の探鉱”

  • 誰に(WHO)
  • 何を(WHAT)
  • なぜ(価値)

を明確にするには、1人の“リアルな顧客”を徹底して観察・理解することから始まります。
そして、「この価値は誰に届くのか?」という問いを忘れず、セグメント別に検証と改善を繰り返しましょう。

※参考文献:たった一人の分析から事業は成長する実践顧客起点マーケティング