【連載/第1回】マーケティングとは「顧客にとっての価値を創ること」

◆マーケティングは「価値」をつくる営み

マーケティングという言葉は、時に小難しく、時に煌びやかに語られがちですが、本質はとてもシンプルです。マーケティングとは、「顧客にとっての価値を創造すること」。

この価値とは、単に企業が作ったものではありません。あくまで「顧客が見いだすもの」です。企業は「顧客にとって価値になるかもしれないもの」を提案し、それを顧客が受け入れたとき、初めて価値が成立します。

◆ビジネスの原則:顧客がいて初めて成り立つ

ビジネスが成立するためには、代金を支払う顧客の存在が必要です。その顧客が「お金を払ってでも手に入れたい」と感じるプロダクト(商品・サービス・体験)を生み出し、継続的に提供し続ける。これが企業の役割です。

仮に赤字でも、将来的に顧客の支払いがコストを上回れば、ビジネスは成立します。また、同じ商品を続けるだけでは顧客は飽きてしまうため、利益を再投資し、価値を進化させ続ける必要があります。

◆マーケティングを構成する3つの行動

このように定義すると、マーケティングとは以下の3つの行動から成り立ちます:

  1. 顧客のニーズを洞察し、価値を感じるプロダクトをつくること
  2. その価値を高め続け、継続的な利益を生み出すこと
  3. その利益を再投資し、新たな価値を提案し続けること

◆「誰に(WHO)」「何を(WHAT)」が分からなければ迷走する

マーケティングで最も重要なのは、どんな顧客(WHO)に、どんなプロダクト(WHAT)を提案するかという軸です。これが定まっていない状態で広告(プロモーション)や価格(プライス)を決めても、効果は期待できません。

逆に、WHOとWHATが明確であれば、その関係性をどう実現するか(HOW)は自然に見えてきます。例えば、牛乳という商品も、誰に届けるかによってその価値は大きく変わります。アレルギーの人には価値はなく、健康やおいしさを重視する人には価値があります。

WHOとWHATの組み合わせがわからないままHOWを考えても、「TikTokがいいかInstagramがいいか」といった議論に終始し、打ち手を誤ります。

◆価値を感じるかどうかは、顧客が決める

価値とは、顧客が自身の「お金」「時間」「労力」「知力」などの有限なリソースを引き換えにしてでも手に入れたいと思える関係性によって生まれます。つまり、顧客の視点なしには、価値は定義できないのです。

次回は、この「価値」を構成する2つの要素——「便益」と「独自性」について、事例を交えて深掘りしていきます。