【連載/第12回】発見した便益と独自性を“売れる言葉”に変換する― マーケティング言語への翻訳術
■ 「価値がある」と“伝わる”ために必要なこと
N1分析で見えてきた便益や独自性。それを商品づくりや広告コピーに活かすには、「伝わる言葉」に“翻訳”する必要があります。
なぜなら──
顧客が「感じた価値」と、企業が「伝えたい価値」が一致していなければ、
購入や行動にはつながらないからです。
■ 顧客が実際に使った言葉をヒントにする
マーケティング言語に翻訳するには、
顧客がインタビューやレビューで実際に口にした言葉から始めるのがポイント。
たとえば:
- ✕「高品質な素材を使用したバッグ」
- ◎「ずっと肩にかけてても全然痛くならないバッグ」
このように、機能説明ではなく、体感やベネフィットの表現に置き換えることで、
顧客の心に届く“便益言語”になります。
■ 便益のタイプを整理してみる
価値を翻訳する際に参考になる、便益の6分類です:
便益タイプ | 例 |
---|---|
機能的便益 | 「軽い」「早い」「壊れにくい」など |
感覚的便益 | 「気持ちいい」「香りが好き」「心地よい音」など |
感情的便益 | 「安心した」「嬉しい」「誇らしい」など |
社会的便益 | 「褒められた」「共感された」「SNS映えする」など |
経済的便益 | 「安い」「長持ちする」「節約できる」など |
自己実現便益 | 「自信がつく」「夢に近づける」など |
→ N1インタビューから得られた言葉を、この6分類で捉え直すことで、
どの便益を伝えるべきかが明確になります。
■ 独自性も「言葉」で証明せよ
独自性は、「それって本当に他と違うの?」という問いに答えること。
以下のような“違いの見せ方”があります:
- 成分や原材料(例:世界唯一の○○配合)
- 開発ストーリー(例:10年間改良を続けてたどり着いた味)
- 使用状況(例:プロアスリートの95%が使用)
ここでも重要なのは、顧客が「へぇ」と感じる具体性です。
抽象的な「こだわってます」ではなく、証拠や数値を添えて伝えることが鍵になります。
■ 「伝える」のではなく「伝わる」に変える
最後に、便益や独自性を伝えるうえでの大原則をもう一度。
- 企業が「伝えたつもり」ではなく、顧客に“伝わっているか”が重要
- 顧客の文脈に合わせて翻訳する
- “利き手の感覚”に言葉を合わせる
→ それこそが、マーケティングにおけるコミュニケーション設計の第一歩です。