【連載/第2回】価値の正体は「便益」と「独自性」──“買う理由”と“他を選ばない理由”

マーケティングにおいて「価値」とは何か。この問いに明確に答えるためには、「価値は顧客が決めるもの」であるという前提に立つ必要があります。そして顧客が価値を感じるとき、それは主に2つの要素から構成されています。

それが「便益(ベネフィット)」と「独自性(ユニークネス)」です。


●便益とは「買う理由」

便益とは、顧客がその商品・サービスを通じて得られるメリットや快楽、悩みの解消など、プラスの変化を指します。有形・無形を問わず、生活の質が上がる、悩みが軽減される、手間が省けるなどがそれに該当します。

例:
膝が痛くない人にとって「膝痛解消のマッサージ」は便益ではありませんが、膝が痛い人にとっては「多少時間やお金を払ってでも受けたい」と思える便益になります。

つまり、便益とは「その人にとって買う理由になるかどうか」で決まります。


●独自性とは「他を選ばない理由」

独自性とは、その商品やサービスが他とどう違うか、あるいは他にはない何かを持っているかを指します。競合と同じ特徴であれば、顧客は価格や手軽さで他を選んでしまいます。

例:
同じ水でも、コンビニで買える100円のミネラルウォーターと、山奥でしか手に入らない200円の水では、状況次第で後者の方が「唯一の選択肢」として価値が高まります。

つまり、独自性とは「競合と比べて、その人があえてこれを選ぶ理由」になります。


●便益と独自性がそろって初めて価値が成立する

人は「便益を感じ、かつ他に代替がない」と判断したとき、最も強く価値を感じます。

  • 便益のみで独自性がない ⇒ コモディティ化し、価格競争に陥りやすい。
  • 独自性のみで便益がない ⇒ ギミックに終わり、継続的な購入につながらない。
  • 便益も独自性もない ⇒ 無駄な投資、いわゆる資源破壊。
  • 便益×独自性が両立 ⇒ 持続的に選ばれる価値。

この組み合わせが「売れるかどうか」を左右します。


●便益も独自性も相対的であり、状況や顧客によって変化する

価値は固定のものではありません。同じ商品でも、置かれる文脈や対象となる顧客によって、便益にも独自性にもなり得るし、ならない場合もあります。

たとえば、ラーメン二郎のように「並んででも食べたい」と思われるのは、便益(味と量)と独自性(他にない体験)の両方を持っているからです。一方、どれだけ「高性能」と謳っても、顧客がその機能に価値を感じなければ意味がありません。


●「便益」と「独自性」は、顧客の頭の中にある

マーケティングとは「価値をつくること」ではなく、「顧客にとって価値になりうるアイデアを提案し、その価値を感じてもらうこと」です。

便益も独自性も、企業が「持っている」と主張しても、顧客が感じていなければ成立しません。


まとめ

  • 顧客が価値を感じるのは、「便益」と「独自性」が揃ったとき。
  • 便益=買う理由、独自性=他を買わない理由。
  • 価値は絶対ではなく、顧客・文脈・状況によって変化する。
  • マーケティングは、「価値になりうるアイデア」を提案し続ける行為である。