【連載/第3回】便益×独自性で4つに分かれる──価値・コモディティ・ギミック・資源破壊

「便益=買う理由」と「独自性=他を買わない理由」が揃えば、顧客は強く価値を感じて購入行動につながります。しかし、現実のプロダクトには、この2つの要素が十分に備わっていないものも多く存在します。ここでは、あらゆるプロダクトを「便益」と「独自性」の有無によって4象限に分類し、それぞれの特徴と戦略的な対応を整理します。


■ 第1象限|便益あり × 独自性あり = 【価値】

最も理想的な状態。
顧客が「これを買うことで得られるものがある」と感じ、かつ「他では手に入らない」と思う状態。価格競争に巻き込まれにくく、リピートされやすい。

例:

  • 「濃厚なのに低カロリーなラーメン」
  • 「高性能なのに誰でも使いやすいスマート家電」

☑ 戦略:継続的な進化と再投資で便益・独自性を磨き続ける。


■ 第2象限|便益あり × 独自性なし = 【コモディティ】

顧客にとって有益ではあるが、同じような商品が他にもたくさんある状態。
結果として価格競争に陥りやすく、差別化が困難になる。

例:

  • スーパーで並ぶ類似のミネラルウォーター
  • 格安スマホ

☑ 戦略:独自性の再設計か、ブランドによる「意味づけ」が必要。


■ 第3象限|便益なし × 独自性あり = 【ギミック】

「目を引くけど続かない」状態。話題性はあるが、実利(便益)がなくリピートにはつながらない。
企業側が“面白い”と思っても、顧客にとって意味がなければ価値にならない。

例:

  • 星型だけど味は普通のポテトチップス
  • 機能に乏しいけどデザインだけ派手な雑貨

☑ 戦略:便益の再定義と設計が必要。プロダクト自体を見直す段階。


■ 第4象限|便益なし × 独自性なし = 【資源破壊】

リソースだけ消費して、顧客にも社内にも何も残らない状態。
この状態の商品・施策は、即時撤退も視野に入れるべき領域です。

例:

  • 味も微妙で見た目も平凡な飲料
  • 既存商品とほぼ同じだが中途半端な新製品

☑ 戦略:すぐに仮説検証し、撤退か再設計の判断を。


■ 便益と独自性の軸は「顧客目線」で測る

重要なのは、これらの分類が“企業の視点”ではなく“顧客の視点”で決まるということです。
「便益があるはず」「独自性があるはず」と思い込んでも、それが顧客に伝わっていなければ“資源破壊”になりかねません。


まとめ:マーケターが目指すべき場所は「右上」

便益と独自性が両立した「右上」の領域にプロダクトを導くこと。
それが、マーケティングの目的であり、持続的な収益を生み出す基盤です。
この4象限の視点は、商品企画・ブランド戦略・広告施策のすべてに応用可能な“価値判断の座標軸”になります。