【連載/第5回】「便益」と「独自性」で価値は決まる ― 顧客が“買う理由”と“他を選ばない理由”

マーケティングの目的は、顧客にとっての「価値」を生み出すこと。その価値は、シンプルに2つの要素 ―「便益(Benefit)」と「独自性(Uniqueness)」― から構成されます。


■ 便益:顧客が“選ぶ理由”

便益とは、そのプロダクトを手にすることで顧客が得られるポジティブな効果です。
たとえば:

  • 痛みが和らぐ(機能的便益)
  • 気分が明るくなる(情緒的便益)
  • 社会的に評価される(象徴的便益)

ひざが痛くない人にとって「ひざ痛改善」は価値ではなく、痛みを抱える人にとって初めて“選ぶ理由”となります。


■ 独自性:顧客が“他を選ばない理由”

独自性とは、そのプロダクトだけが持っている、あるいは圧倒的に優れている特徴です。
たとえば:

  • ここでしか体験できない味
  • 業界初の機能
  • 手に入りにくい限定性

同じ便益を持つ商品が複数ある場合、「それでもなぜ選ばれるのか」がなければ、差別化はできません。


■ 「価値の四象限」でプロダクトの状態を診断

あらゆるプロダクトは、「便益」と「独自性」の有無によって次の4象限に分類されます:

独自性なし独自性あり
便益ありコモディティ(代替可)価値(理想)
便益なし資源破壊(無意味)ギミック(一発屋)
  • 価値:継続購入が期待でき、価格競争にも巻き込まれにくい
  • コモディティ:価格競争に陥りやすい
  • ギミック:話題にはなるが、継続購入されにくい
  • 資源破壊:労力・費用の無駄に終わる

■ “価値を感じてもらえるか”は、顧客によって違う

価値は“絶対”ではなく、“関係性”です。

  • 山奥の200円の水 → のどが渇いていれば便益も独自性もあり「価値」
  • 都市部の200円の水 → 他に安価な選択肢があれば「価値なし」

顧客の状況・感情・選択肢によって、価値の有無は変化します。


■ 「便益+独自性」=価値のアイデア

企業が生み出せるのは「便益と独自性の組み合わせ=アイデア」です。
価値を感じるかどうかを決めるのは、あくまで顧客。

  • 企業の提案:「これはあなたにとって価値があるかもしれません」
  • 顧客の判断:「自分にとって便益がある」「他では手に入らない」

この2つが重なった瞬間に、“価値”が生まれます。