【連載/第6回】「N1分析」で価値の種を見つける ― 顧客起点のマーケティング戦略とは
マーケティングの出発点は、「誰が」「何に」価値を見いだすのかを理解すること。
この「誰に」「何を」を見極めるために行うのが、N1分析です。
■ 「顧客理解」は、具体的な1人から始まる
顧客理解というと、アンケートや統計などのマス分析を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし本質的なニーズや心理を掘り下げるには、具体的な1人=N1へのインタビューが最も効果的です。
たとえば、次のような問いを時系列で掘っていきます:
- その商品を知ったきっかけは?
- どんなときに欲しいと思った?
- なぜ他の商品ではなくそれを選んだのか?
- 継続して購入・使用している理由は?
これらから、表層的ではない「深層心理」が見えてきます。
■ 顧客が“自分でも気づいていない”ニーズを見抜く
人は、自分の本当の購入理由を言語化できていないことが多いです。
N1分析は、顧客の何気ない一言や表情、言いよどみを拾いながら、
「その言葉、どういう意味ですか?」
「それはいつから気になっていたんですか?」
といった問いかけを通じて、深層心理=インサイトを導き出します。
■ 1人に価値を届けられれば、同じような人にも届く
「たった1人を深掘りしても意味がないのでは?」と思うかもしれませんが、
1人が強く価値を感じているなら、同じようなニーズを持つ人が他にもいる可能性は非常に高いです。
- まずは1人に強く刺さる提案を
- 次に、それと同じ価値を求める層の広がりを量的に検証する
というステップを踏むことで、無駄な投資を避けつつ、確実な拡大戦略がとれます。
■ 架空の“ペルソナ”より、実在のN1を分析せよ
よく使われるマーケティング手法に「ペルソナ設計」がありますが、
架空の人物像を作っても、仮説の域を出ません。
N1分析では、**“今、実在する顧客”**と徹底的に向き合います。
その顧客の行動・感情・きっかけを深掘りし、「何に強く価値を感じているか」を把握します。