【連載/第9回】「便益」と「独自性」はどう生まれ、どう言語化されるのか― 顧客が“買いたい理由”と“他を選ばない理由”を可視化する
■ 価値とは「便益 × 独自性」の関係で決まる
マーケティングで言う「価値」は、顧客がその商品にお金・時間・手間を払う理由。
この価値は、以下の2つの要素から成り立っています。
- 便益(Benefit)=買う理由
顧客にとっての「役立つこと」「快いこと」「困りごとの解決」。 - 独自性(Uniqueness)=他を選ばない理由
「これにしかない」「他にはない」と感じさせる要素。
便益と独自性が両立して初めて、「これは欲しい!」と顧客が感じる“価値”が生まれるのです。
■ 便益は「顧客のプラス」または「マイナスの解消」
便益には2種類あります。
- プラスの提供:
「楽しい」「美味しい」「便利」「気持ちいい」「自慢できる」など。 - マイナスの解消:
「痛みがなくなる」「イライラが解消する」「手間が省ける」「不安がなくなる」など。
たとえば、膝が痛くない人に「膝の痛みが治るマッサージ」は便益になりません。
でも痛みに悩んでいる人にとっては、“わざわざ行ってでも受けたい”便益になります。
■ 独自性は「競合では代替できない理由」
独自性とは、「似たような商品があっても、あえてこれを選ぶ理由」です。
例えば:
- 他にない機能や設計(技術的な独自性)
- 特定のシーンに特化した使いやすさ(状況対応力)
- デザインや世界観の唯一性(感情的な独自性)
顧客にとって意味がなければ、どんなに尖った特徴も“独自性”ではない点に注意です。
■ 「便益」×「独自性」で4象限に整理する
すべてのプロダクトは、次の4象限に分類できます。
独自性がある | 独自性がない | |
---|---|---|
便益がある | ✅価値(売れる) | ⚠コモディティ(価格競争) |
便益がない | ⚠ギミック(一発ネタ) | ❌資源破壊(ムダ) |
右上=「価値」があるゾーンを目指す。
逆に、便益も独自性もない左下は、リソースのムダ=「資源破壊」となってしまいます。
■ 便益と独自性の「言語化」がマーケターの武器
優れたマーケティングは、便益と独自性を曖昧なままにしない。
「なんとなくウケそう」「感覚的にスゴい」ではなく、誰が、何を、なぜ、どう評価したのかを明確に言語化していきます。
言語化のポイント:
- 便益は「〇〇できるようになる」「△△が減る」という表現で
- 独自性は「□□なのはこれだけ」「■■だからこそ可能」という表現で
便益は「選ぶ理由」、独自性は「他を選ばない理由」――この2つが明確になると、商品は“売れる言葉”を持ち始めます。