原研哉

1. Emptiness

原研哉のデザイン思想の核となる概念は「空(くう)」または「Emptiness」です。これは、日本の美意識における「余白」や「からっぽ」の状態を意味します。徹底的に要素を削ぎ落とすことで、器そのものをニュートラルにし、受け手の想像力や情報を満たす受容性を高めることを目指しています。デザインを、何かを付け加える行為ではなく、本質的な状態に立ち戻らせる行為として捉えています。

2. Re-design

再構築

彼の提唱する「RE-DESIGN」は、単なるリニューアルではありません。見慣れた日常的なものを、「未知なる既知」として捉え直し、新鮮な視点や驚きをもって再構築することを目的としています。トイレットペーパーやマッチといった身近な製品のデザインを例に、デザインの創造的な可能性を提示し、常識への問い直しを促しました。

3. Communication

伝達

デザインは、情報伝達の媒体として非常に重要な役割を担うという考えを持っています。情報を最も効果的かつ誠実に伝えるために、過剰な装飾や個人的な表現を抑制し、本質的なメッセージがストレートに届く構成を追求します。デザインのプロセスは、企業や製品の本質を深く理解し、抽出する行為であると見なしています。

4. MUJI

無名

株式会社良品計画(無印良品)におけるアートディレクションは、原研哉の思想を最も体現したものです。ブランド名が示す通り、「しるしのない良品」という理念を視覚化しました。特定の主張や装飾を排し、素材そのものの質感やシンプルで機能的なフォルムを重視することで、「これでいい」という普遍的な満足感を生み出しました。これは、消費社会における匿名性の価値を提示した成功事例です。

5. Haptic

触覚

視覚情報が支配的な現代において、彼は「触感(Haptic)」の重要性を強調します。紙のざらつき、布の質感、パッケージの厚みなど、五感を刺激する感覚的な要素をデザインに取り入れることで、情報の受け取り方をより豊かで立体的なものにすることを目指しています。これは、人間の身体性に訴えかける、日本的な繊細な感受性に基づいたアプローチです。