ハーバート・マター

1. Origins

生い立ち

Herbert Matter は1907年、スイス・エンガディン地方に生まれた。美術教育を経て1920年代後半にパリへ渡り、Académie Moderne にてフェルナン・レジェやアメデ・オザンファンに師事する。モダニズム、構成主義、そして写真とグラフィックの融合が進んだ当時のパリの空気を吸収し、彼の後の独自スタイルの基盤が形づくられた。

2. Breakthrough

スイス観光ポスターによる飛躍

Matter を国際的に知らしめたのは、1930年代初頭に制作したスイス観光局ポスターである。大胆なアングルの写真、拡大やトリミングによるダイナミックな構図、明快なタイポグラフィは従来の観光広告とは一線を画すものだった。これらの作品は現在 MoMA などに収蔵され、モダングラフィック史の重要作として評価されている。

3. Relocation

アメリカ移住と活動領域の拡大

1936年にアメリカへ移住した Matter は、ニューヨークで Vogue や Harper’s Bazaar などの媒体に携わり、写真とタイポグラフィの融合による新たなページ構成を提案した。広告、編集、写真、展示など複数領域を横断し、アメリカ商業デザインの視覚言語に大きな影響を与えた。

4. Collaboration

イームズ夫妻との協働

1940年代後半より Matter はチャールズ&レイ・イームズと協働し、企業展示、映像、家具プロモーション、IBM のコミュニケーションプロジェクトなど多岐に参加した。イームズオフィスにおける視覚構成の精度を高めた人物として記録されている。

5. Identity

Knoll のアートディレクション

1950年代、Matter はモダン家具メーカー Knoll のアートディレクターを務めた。ロゴとタイポグラフィの統合、広告・カタログの構成、製品写真の方針づくりなど、企業の視覚体系を整理し、今日の Knoll のミニマルで洗練されたブランドイメージの基盤を築いた。

6. Photography

芸術写真としての活動

Matter は商業デザイナーであると同時に写真家としても高く評価された。都市の構造物、影、反射、抽象化されたフォルムを扱う作品は、構成主義の影響を受けつつ、写真を“構造的視覚言語”として扱う独自の立ち位置を確立した。多くの作品が世界の美術館に収蔵されている。

7. Legacy

遺産と影響

Herbert Matter の仕事は MoMA、Smithsonian、Library of Congress に収蔵され、その文化的・歴史的価値が公式に認められている。「写真 × グラフィック × 構成」を統合した彼のアプローチは、企業アイデンティティから編集デザインに至るまで多方面に影響を与え続けている。Matter はモダンデザインの新しい地平を切り開いた存在として、今日も重要な位置を占めている。